団長ブログ「ノベルゲーム、フルボイスの課題」

 立ち絵がないノベルゲーム。開発にあたって、一つ大きな課題が浮上した。

 フルボイス。
 ノベルゲームにおいて、売りの一つに数えられてから長らく久しい言葉である。
 今からプレイするゲームがフルボイスである、と聞いてガッカリするノベルゲーマーはいないであろう。私もそうだ。内容変わらずボイスの有無を選べるなら、もったいない精神が後押ししてボイス有を選んでしまう。
 実際に、シナリオライターの魂がこもったキャラクターの台詞に音が乗ることで、ゲームの臨場感は何倍にも跳ね上がることには間違いないのだが……どうしても避けられない問題がある。

 ボイスをスキップするか否かだ。

 これはノベルゲーマーの中でも非常に賛否分かれる話題である。せっかく声優がキャラに命を吹き込んでくれているのにスキップするなんて、いやでもたわいのない掛け合いや説明をいちいち聞いてられるかよ、などなど非常に根深い。
 そしてここで重要なのは、スキップをするか否かによって物語を読み進めるスピードが大きく変わってしまうという点だ。多少の個人差は加味しても、人間は視覚的に文字を追う方が圧倒的に速い。ボイスを全て聴くとなると確実に「待ちぼうけ」を食うわけである。
 脳内はとっくに次のテキストを求めているのに進めないというのはかなりのストレスに違いない。
 データを取ったわけではないものの、実際のところ大半のユーザーが要所のシーンを除きほとんどのボイスをスキップして物語を読み進めていることだろう。
 また一概には言えないが、ノベルゲームの王道の型である主人公の一人称が主軸の作品では、主人公のみボイスが搭載されていないことが多い(これはプレイヤー自身が自己投影しやすくなるからとされている)。
 当然主人公とその他の「会話」を中心に作品は展開するわけで、ボイスの有るテキストと無いテキストが目まぐるしく入れ替わるのである(ましてや地の文も挟まれる)。

 長々と語ったが、要するにテンポがものすごく悪い。
 そしてそれはイコールで、ノベルゲームにボイスはそもそも必要なのか?という疑問に終着する。

 再度言うが、声優の熱演により物語の質は確実に上がる。しかし、プレイヤーに常に過負荷をかけた状態を強いるのはどうか?という想いがあるのだ、私には。
 神経質すぎるのかもしれない。ひょっとしたら、「いらない部分はスキップすればいいだけ」と、そう言われるかもしれない。
 が、考えをやめてはいけない、と思う。

 だから私は、三つの案に絞った。

 まずは一つ目。要所のシーンのみフルボイス(スキップ不可能)。
 これは最小のコストで物語の臨場感を「最低限」演出できる択だ。告白シーンやエッチシーン、ボスバトルやラストバトルなど盛り上がる場面にのみボイスを吹き込むわけである(スキップ不可は、意図せずスキップしてしまうことを防ぐため。短いシーンであればそこまで気にならないと思われる)。それ以外の場面に物寂しさを感じそうであれば、ヒロイン格にのみ汎用ボイスをつけることも考えている。
 コストを抑えつつも起こりうるテンポ問題を一気に解決できる、一番現実的な案と言えるだろう。

 次に二つ目。あえて完全フルボイス(スキップ不可能)。
 これは莫大なコストをかけてなお、勇気の択だ。ボイスのスキップをプレイヤーに委ねるのではなく、完全に制限してしまう。三人称視点の地の文を除き、一人称の地の文でさえもボイスを搭載する。
 物語のキャラクターを最大限「生かせる」ことができ、ある種のアニメとも呼べるものに近づく。アニメが好きな層に刺さる可能性も高い。……が、ノベルゲームの乏しいゲーム性の一つである「クリック」の意味がほぼ失われ、プレイヤーの時間を強制拘束するという「テンポの問題」に逆方向からプロセスする、まさに「賭け」としか言いようがない案である。

 最後に三つ目。ボイスなし。
 古き良き択だ。一枚絵を紡いでいくという私のノベルゲームに、ある意味でぴったりかもしれない。漫画的表現に近く、漫画が好きな層には刺さる可能性を秘めている。テンポ問題も解決できコストもよりカットできるが、従来のノベルゲームと比べて物足りないと言われても仕方がない案なのかもしれない。
 …………いずれにせよ、開発を進めるにはシステムを定めなくてはいけないのだ。

 ノベルゲームのライトユーザーからヘビーユーザーまで、あらゆる意見を収集したのち、吟味して、最終決定する——。

追記(2022/12/3)

 コストを第一に総合的に再考した結果、少なくとも体験版は汎用ボイスを用いつつ、要局面でフルボイス化することを仮決定。

 実際に使った後、間を感じてみてフルボイスがいけそうなら、フルボイスで。

コメント

  1. 匿名 より:

    >せっかく声優がキャラに命を吹き込んでくれているのにスキップするなんて

    個人的にはよく聞くこのワード「命を吹き込む」ってのがちゃんちゃらおかしいというか
    むしろ圧倒的に邪魔なのがボイスなんだよなぁ……
    ノベルゲームで文章を読んでいて、すごい迫力を感じたシーンとか。試しにボイスONにして聞いてみると「本当にこのシーン理解してこの演技したのか?」って言いたくなるくらいお話しにならないことが多い
    実際ボイス収録の現場を知らないので、声優さんが内容をどこまで理解してるのかもしらんけど
    文章で読むときに脳内に再生されるそのキャラの声よりも劣化している場合しかないんだよね声優のボイスって……

    そもそも命はすでに二次元キャラには存在している
    まあブイチュバーみたいな電脳キャバクラが流行るんだから、三次の声が耳で聞こえないと、二次元キャラに命を感じないし声も聞こえないって人の方が多数派なんだろうけれど
    それでも俺はいらんなぁボイス。せっかくの素晴らしい作品の不純物にしか感じたことが無い

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